2010年11月24日

エルザさんからの贈り物


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石田エルザさん。
私にとっては叔母からたびたび聞く名前のひとつでした。
叔母は自分の母親(私の祖母)のようにエルザさんを慕っていたように思います。

今から25年ほど前、叔母が犬の散歩中に,外国人と勘違いしてエルザさんに声をかけたのがきっかけでした。
(エルザさんは長年の外国暮らしで雰囲気はまるで外国人でしたから・・・)
叔母はフランス帰り、エルザさんはブラジル帰り、どちらも日本の生活に慣れず
違和感を感じていた頃のことです。
ふたりは懐かしい異国のにおいをお互いに感じ取ったのでしょう・・・
あっという間に親しくなりました。
そうして近所に住む料理好きな2人の間で、できたてのお料理が行き交いました。

エルザさんは料理が常に身近にある環境の中で育ったようです。
ご主人の仕事の関係でわずか17歳でブラジルに嫁ぎました。
その後30年余り中南米で過ごされ、日々の生活の中から家庭料理を学ばれました。
帰国してからは、中南米の家庭料理を日本の材料で工夫し、独自の味を作って来られました。
NHKの「きょうの料理」に出られたり、数々の料理本、「婦人之友」や「母の友」などにもお料理を提供し活躍されました。
叔母との繋がりから、私も少しだけお付き合いをさせていただきました。
一番の思い出はお宅にお邪魔して秘伝のバナナケーキを教えていただいたことです。
また大学卒業後、私が料理の道に入ろうと決めた時には、日本橋の老舗の刃物屋さん『木屋』で一緒に包丁を選んでくださいました。
私との接点は本当にわずかなものでしたが、日本人とは思えない欧米的なたたずまいと澄んだ輝く瞳が印象的でした。

ご高齢になられたエルザさんのレシピやメモは大学ノート20冊以上もあります。
現在アリゾナに住むご長女の輝子さんは、日本に帰国する度に、これを誰かに託したいと叔母に相談していました。
その輝子さんの思いに応えて、叔母はレシピをまとめて本に出来ないかと考えたのですが、
その反面、もっとこのレシピを大切に出来る方法がないか迷いもあったようです。

そんな迷いの中で浮かんだのが、小さな宿の中で料理という仕事に携わっている私達夫婦だったというわけです。
そして、この度、輝子さんの信頼を得て大切なこのレシピをお預かりすることになりました。
私達がこのレシピを再現し、宿に来て下さるお客様に味わってもらえるということ、
身近な手から手へと伝えられることは本当に嬉しいことです。

もちろんエルザさんのレシピを完全に再現することなど正直できません。
作り手が違えば必ず味は違ってきます。
でも料理をこよなく愛した石田エルザさんの思いを受け継ぎ、伝えてい けたらと思っています。
そしてこのブログを公開することで、エルザさんの思いと味を少しでも多くの人に共感していただけたら嬉しく思います。

叔母とエルザさんとの絆が与えてくれた、私達へのプレゼントを大切にしていきたい思います。
そしてそれを許して下さった輝子さんに、たくさんの感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

愛を込めて・・・・
(エルザさんが叔母に贈った料理本に必ず添えられていた言葉です)



*エルザさんの経歴の1部は「婦人之友」を参考にしました。




posted by ako at 18:17| Comment(0) | madame Elza